グローバルスタンダード最前線
ITU-T SG13会合参加報告
将来ネットワークを議論するITU-T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector) SG(Study Group)13の会合が2024年7月にジュネーブ(スイス)で開催されました。NTTおよび連携する企業全7社は研究課題Q22において、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)のハイレベルアーキテクチャとして「統合ネットワーキングにおける低遅延、高エネルギー効率通信のフレームワーク」に関する寄書提案を行いその結果、該当の勧告草案を新ワークアイテムとして議論開始することが承認されました。ここでは、SG13会合結果の概要と、特にQ22の模様を中心にお伝えします。
山本 浩司(やまもと ひろし)/福園 隼人(ふくぞの はやと)
NTT研究企画部門
2024年7月ITU-T SG13会合(ジュネーブ)について
ITU-T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector) SG(Study Group)13の会合が2024年7月15~26日の日程でジュネーブ(スイス)で開催されました。日本からは代表団共同団長として生天目翔氏(総務省)、山本浩司(NTT)が、代表団メンバーとして林通秋氏(KDDI)、加藤拓也氏(KDDI)、谷川和法氏(NICT、SG13議長)、釼吉薫氏(NICT)、KAFLE Ved氏(NICT)、岩崎順子氏(NEC)、後藤良則氏(NTT)の合計9名が現地参加しました。
今回の会合では、合計339名の参加者(うち現地135名)、299件の寄書入力があり35件の新規勧告、6件の既存勧告改定がコンセントされました。
通常の課題議論に加え、2024年10月のWTSA(World Telecommunication Standardization Assembly:世界電気通信標準化総会)に向け次会期(2025-2028)の研究課題体制についての議論も行われました。また、開催2日目のランチタイムにIOWN Global Forum(IOWN GF)から取り組み紹介を行う技術セッションが開催され、ランチタイムにもかかわらず多数の参加者が集まりIOWN(Innovative Optical Wireless Network)への興味の高さが感じられました。
現在、ITU-T SG13には13の研究課題(Q:Question)があります。筆者らは特にQ22“Networks beyond IMT2020: Emerging network technologies”で、IOWNのハイレベルアーキテクチャの具体化に資する議論に参加しましたので、以降ではQ22の模様について詳報させていただきます。
Q22“Networks beyond IMT2020: Emerging network technologies”の概要について
表1はQ22の現在の執行体制を示しています。ラポータは日本国のベド カフレ氏(NICT)、アソシエイトラポータはJie Zhang氏(中国)が務めています。今回の会合ではQ22での議論の結果15件の出力文書がありました。表2に今回のQ22に関する出力文書一覧を示します。本報告ではNTTを含む全7社による出力文書SG13-TD927-R1/WP1「Draft new Recommendation ITU-T Y.L2E2net-frm:“Framework of low-latency and energy-efficient communications in integrated networking”」の内容を中心に、Q22での議論をお伝えします。
Q22におけるIOWNのハイレベルアーキテクチャの議論
KDDI、OKI、住友電工、ソニー、富士通、NEC、NTTの7社は、IOWNのデジュール標準化に向け、統合ネットワーキングにおける低遅延、高エネルギー効率を実現する通信のフレームワークの検討開始に向け寄書提案を行いしました。図は提案寄書の中で利用されたフレームワークを表したもので、このフレームワークに基づきさまざまな種類のネットワークドメインの相互接続とエンド・ツー・エンド接続の統合ネットワーキングが実現可能となることをめざしています。
また、この統合ネットワークのハイレベルの要求条件について、例えばITU-T F.748、Y.3142、Y.3090に示されているAI(人工知能)、ITU-T H.430に示されている高臨場ライブ体験、デジタルツインなどのユースケースに基づいて検討予定であり、またロスレスの接続性、トポロジ面の柔軟性、接続の持続性、マルチドメインの相互接続性、運用、監視、保守、などに対しても検討が必要です。
この提案に対して、①SG5、SG15とのスコープ重複への懸念、②勧告(Recommendation)ではなく技術報告(Technical Report)の検討から始めるべき、③ワークアイテムタイトルの変更、などのコメントがあり、一部は提案内容を受け入れつつ、最終的に関係者合意に至りました。
今後の予定
次回の議論の機会として2024年12月初旬に、中間会合が、2025年3月に本会合が予定されており、本提案の議論が行われる予定です。関係各社との連携の下で、最終的には2026年前半のSG13会合で本勧告のコンセントをめざしています。
まとめ
かつてはNGN(Next Generation Network)標準化の中心となっていたITU-T SG13は現在、将来ネットワークの設計指針、スライス、AI/ML(Machine Learning)、量子鍵配送ネットワークなどの議論が行われており、そしてIOWNのハイレベルアーキテクチャとして高エネルギー効率、低遅延の要求条件に対するネットワーキングの議論が開始されようとしています。NTTおよび関係各社はIOWNのデジュール標準化に向けて今後も標準化活動を推進していきます。