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Focus on the News

NTTとIntel、新たなコミュニケーション基盤「IOWN」の実現に向けた共同研究契約の締結について

NTTとインテル コーポレーション(インテル)は、消費電力の大幅な削減など従来技術の限界を超える未来のコミュニケーション基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」技術の共創を目的に2023年4月までの共同研究契約を締結しました。
両社の提携は、研究開発における戦略的協業として、NTTの業界トップクラスのフォトニクス技術、デジタル信号処理(DSP)技術、コンピューティング技術、ネットワーク基盤運用技術と、インテルの豊富な技術ポートフォリオ、サポート体制、ハードウェア・ソフトウェアに関する専門知識を活用するものです。今後、NTTとインテルは、スマートでコネクテッドな世界の実現に求められる爆発的なデータ量の処理が可能となる技術開発に向けた研究等に取り組んでいきます。

提携の概要

(1)フォトニクス/光電融合技術
光技術を従来の長距離信号伝送だけでなく、電子回路と連携したプロセッサチップ内の信号処理部にも導入し、光電融合による新しいコンピューティング基盤を実現します。

(2)高速分散コンピューティング
大容量・低遅延な将来の通信インフラを最大限に活用して、膨大なリアルタイムデータを効率的に処理するコンピューティングインフラを実現します。

(3)オープンフレームワーク
多様化しながら加速的に進化しているAI演算デバイスを(2)の高速分散コンピューティングインフラにおいて活用するためのソフトウエアフレームワークを開発します。

今後の予定

本共同研究成果を活用したスマートモビリティ、スマートインダストリ(スマートアグリカルチャ含む)、スマートエリアマネジメントのPoC、ユーザ評価を2020年度下期より開始し、IOWN構想の具現化を加速させていきます。
また、本共同研究は、先端フォトニクス技術、エッジ・コンピューティング、分散コネクテッド・コンピューティングなどのフォトニクス・ネットワークの全インフラストラクチャを統合して、将来のデータおよびコンピューティング要件を満たす、新しい通信インフラストラクチャの採用促進につながる取り組みとして、NTT、インテル、ソニーによって設立されたIOWN Global Forumでの活用についても検討していきます。

問い合わせ先

NTT広報室
E-mail ntt-cnr-ml@hco.ntt.co.jp
URL https://www.ntt.co.jp/news2020/2005/200514a.html

パートナー紹介

新たなネットワーク需要を見据えた次世代通信インフラの構築

アシャ ケディ
インテル コーポレーション
副社長 兼 次世代標準化グループ長

インテルは、以前からテクノロジを通じて地球上のあらゆる人々の生活を豊かにするといった長期的な展望について述べてきました。このたびのNTT様との協業は、その展望を実現するうえで重要なステップです。この協業から生まれるであろう新たなソリューションは、情報通信分野にとどまらず、さまざまな業界に幅広い影響を及ぼすと考えます。例えば、輸送、ロジスティクス、精密医療、環境計画、製造といった業界はすべて、今後両社で研究を進める高速分散通信インフラに基づいた、よりインテリジェントな世界から多大な恩恵を受けることができるでしょう。この重要な取り組みの結果については今後ともご期待ください。

研究者紹介

ナノフォトニクスによる光電融合コンピューティング技術の開拓に向けて

野崎 謙悟
NTTナノフォトニクスセンタ/NTT物性科学基礎研究所 特別研究員

現在、光技術は通信応用にとどまらず、情報処理技術としての可能性が深く模索されています。我々はこれまでナノフォトニクスと呼ばれる微細構造を利用した光制御技術を研究し、一方で、世の中ではシリコンフォトニクスのような大規模光回路の製造技術が発展を遂げています。光コンピューティング技術への期待は世界的にも高まり、その状況の中、IOWNの枠組みとしてインテルとの連携がなされることに強い機運を感じています。
光は超高速な信号処理が可能とはいえ、それだけでは実用的なコンピューティング基盤として成り立たず、大規模なデジタル処理や大容量メモリを持つCMOS電子回路と融合し、機能分担させることで優位性が発揮されるといえます。その意味で今回の連携は強い意義があり、また、これまで基礎研究が主であったナノフォトニクス分野にとって新たなフェーズを開拓する機会と考えています。

研究者紹介

IOWNがめざす高速処理・低遅延なサービスインフラの実現に向けて

益谷 仁士
NTTネットワーク基盤技術研究所 コグニティブファウンデーションNWP ネットワーク革新技術共創G

さまざまなデバイスや、人の行動に伴って出力されるデータが増大することが想定されており、高齢化社会やさまざまな産業が抱える課題の解決には、大容量なデータを利用した複雑なデータ分析を決められた時間以内に処理し、結果をフィードバックすることが重要になります。特に生活基盤を支える一次、二次産業や将来期待されている自動運転などの新しいサービスでは、リアルタイムな応答が求められるケースが多く、実現にはコンピューティングとネットワーキング技術を融合させた世界初のサービスインフラが必要となります。インテルとの共同研究では、より一層必要とされる計算処理能力の飛躍的な向上に加え、ネットワーキング技術を連携により、「従来のIPパケット網では困難であった」迅速な応答性を伴ったサービス処理基盤を実現する高速分散コンピューティングの検討を行い、社会へサービスとしてフィードバックしていきたいと考えております。

研究者紹介

IOWN のオープンフレームワークをめざして

江田 毅晴
NTTソフトウェアイノベーションセンタ 第二推進プロジェクト

IOWNを実現することで、現在クラウドに置かれているビッグデータはよりユーザの近くに安全に配置され、日々の生活を豊かにするために必要な計算をより低遅延に行うことができると考えています。そこで求められるのは、スーパーコンピュータのような大規模計算ではないし、スマートフォンのように個人個人の端末で完結する計算だけでもありません。地域ごとのデータの集約・管理と、必要な計算資源の適切な配置を自在に操ることのできる計算基盤が必要になります。
インテルが力を入れているIoT分野やAIチップは、まさにこうした基盤の実現に必要不可欠な構成要素です。今回の連携によりお互いの強みを活かした強力な研究成果が生まれると信じています。