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特集

NTTグループのSmart Infraへの取り組み

Smart Infra構想を実現するSmart Infraプラットフォーム

本稿では、NTTグループの通信設備(基盤設備)に関する維持管理業務において、ICTを活用し、スマートに実現にする「Smart Infra構想」を紹介します。また、「Smart Infra構想」をNTTグループの自社デジタルトランスフォーメーション(DX)だけではなく、社会インフラ事業者が抱える課題をも解決するために実現する「Smart Infraプラットフォーム」の基本的な構想、およびSmart Infraプラットフォームを活用したユースケースを紹介します。

古角 康一(ふるかど こういち)/村上 隆史(むらかみ たかし)
高木 洋一郎(たかき よういちろう)
NTTインフラネット

NTTグループの通信インフラ(基盤設備)の現状

モバイル通信が5G(第5世代移動通信システム)、6G(第6世代移動通信システム)と進化するにつれ、さらなるデータ量の増加が見込まれます。2030年のトラフィック量は、2010年比で約1000倍規模になると想定されており、全体トラフィック量に対応した通信設備の大容量化が必要です。そのため、無線基地局までのアクセス系通信網や、コアネットワークの中継網の需要も増加していきます。
NTTグループの通信ネットワークを支える通信インフラ設備(基盤設備)は、1960年代から1980年代が建築のピークであり、今から約20年後には、建築後50年以上経過する設備が約85%となり、設備の老朽化は年々深刻化していきます。
一方、当時のメタルケーブルの通信から、光ケーブル通信に変わり、さらには光ケーブル技術、光通信技術の進歩により、同じ1つの管路で伝送できるデータ量は莫大に増加していき、すでに構築されている管路の追加増設は必要なく、今後も既存ストックを活用する必要があります。さらに、生産年齢人口の減少により、保守人員も急激に減少していくため、設備メンテナンスの効率化、高度なスキルやノウハウを必要としない維持メンテ手法の確立が急務です。
NTTインフラネットでは、ICTを活用したスマートメンテナンス事業として、MMS(Mobile Mapping System)を活用した通信設備点検、およびNTTグループ製の地図システム「GEOSPACE」と連携したGIS型設備管理システム「トリプルIP」の開発・運用を行い、NTTグループの通信設備(基盤設備)の維持管理業務を行ってきました。
また、他の社会インフラ設備を運用している業界においても、NTTグループがおかれている環境と同じと考え、NTTインフラネットが所有しているICTを活用した設備管理技術を基に、社会インフラ事業者の抱える課題を解決すべく「Smart Infra構想」を立上げ、インフラ事業者のスマートなメンテナンス事業の展開をめざしています。

Smart Infra構想とSmart Infraプラットフォーム

■Smart Infra構想

インフラ事業者を取巻く設備維持管理に関する課題は以下のとおりです。
・ 社会インフラ全体の老朽化【建設ピークから40年~60年経過】
・ 保守要員の高齢化【労働人口の減少】
・ 各社ごとのバラバラのオペレーション【所有者単位での営業業務】
NTTインフラネットでは、Smart Infra構想として、共用化=【共同構築+既設活用+オープン化】をキーコンセプトに基盤設備分野の取り組みの指針とした新たな事業立上げをめざしています(表)。
各社の保有している設備データを共有することにより、共同収容等事業者どうしの設備の共有化を図り、各社で共通的に実施されている施工・点検・立会い等の業務を共同で行うことにより、メンテナンスに関する人的リソース、およびコスト削減をめざしています。なお、ここでいう設備管理データとは、顧客情報や設備情報など企業機密情報ではなく、インフラ設備を維持メンテナンスしていくための設備の位置情報や、外見等の構造情報です。

■Smart Infraプラットフォーム

現実世界を構成するモノや人などをサイバー空間に再現し、それらを組み合わせて高度なシミュレーションを行う技術であるデジタルツインコンピューティングについて紹介します。
人間や車の動き、周りの環境の情報をリアルタイムにデジタルツインワールドに再現する技術は現在、研究開発が進められており、自動運転などのMaaS(Mobility as a Service)への展開が期待されています。
Smart Infraプラットフォームは、インフラ事業者各社の設備という静的データをデジタルツインワールドに構築し、サイバー空間で工事計画や工事設計を行うことで、他社設備への影響等を確認し、リアル空間での実際の工事実施に反映させ、維持管理業務や施設設置工事に活用することをめざしています(図)。
各社の設備情報は、各社個別の地図データを元に管理されています。しかしながら、元の地図データが異なると、地図とリアル空間との誤差が各社で異なるため、各社の設備位置情報を基にそのままの位置情報でデジタルツインワールドに構築した場合、同じ場所にある設備でも数cmから数mのズレが生じてしまいます。
Smart Infraプラットフォームでは、コア機能として高精度3D空間情報を構築しており、各社の設備位置情報を、高精度3D空間情報を基に補正し、デジタルツインワールドに構築するため、リアルワールドとの誤差は標準偏差で十数cm以内となります。
ただし、古い埋設設備の位置管理情報には不正確なものや、道路縁からの相対位置で埋設設備の位置情報を管理している場合、設備設置後に制定された都市計画等により道路形状が変更されているため、当初の位置が不明確となる場合があります。
Smart Infraプラットフォームでは、デジタルツインワールドに設備位置情報を取り込むときに、元データの信頼度も一緒に取り込み、その後のシミュレーション等で設備情報を利用するときに、シミュレーション結果のリスクを判別できるようにしています。
なお、地下に埋設された設備は直接視認することができないため、地下の不明確な位置情報の信頼度向上手法として、NTTアクセスサービスシステム研究所の電磁波探索技術やアイレック技建の地下埋設管探査技術との連携等を検討中です。

図 Smart Infraプラットフォーム

■Smart Infraプラットフォームを活用したユースケース

設備管理業務の1つである工事立会関連のユースケースとして、以下の3点が利用可能と考えています。
(1) 工事範囲内の自社埋設物有無の自動判定
工事施工者からの掘削工事申請時に、工事範囲に各社埋設設備の有無を判定します。判定結果をオペレータが確認、工事施工者に結果を回答し、埋設設備位置の信頼度により、判定基準が変更可能であり、信頼度の高いエリアでは全自動判定が可能となります。
(2) 施工協議用地下埋設物3D表示
工事施工者との施工協議時に地下空間の埋設設備を3D表示します。現行は平面図、縦断図、横断図を使用し、協議を実施している所に加え、地下空間を3D表示することでいろいろな角度から工事時の危険ポイントが確認可能です。また、将来的には、遠隔での施工協議の実現につなげることが可能です。
(3) 現地立会支援用AR表示
工事現場での現地立会者は、埋設設備の図面にて自社設備への影響を確認するなどの立会業務を実施しています。これに加え、埋設設備の3D情報を現場の映像と重ね合わせAR(Augmented Reality)画像として表示し、危険予知精度を向上させることが可能です。また、将来的に、工事現場にリモートカメラを設置し、現地の遠隔映像と3D埋設設備を合成したAR画像を生成し、遠隔立会の実現につなげることが可能です。

Smart Infraプラットフォームがめざす方向

ここでは、NTTグループが所有している通信設備(基盤設備)においてSmart Infraプラットフォームを活用したユースケース【立会関連業務】の例を紹介しました。
Smart Infraプラットフォームは、自社DXにおける業務のスマート化に貢献できますが、本来は自社情報のみではなく、他社の設備管理データと連携させることでより効果が発揮できるものです。今後は他社の工事関連情報と連携することで、同じ個所を工事するときなどは、同じ個所を別々の会社で何度も掘削・舗装することなく、共同で施工が可能となり、工事費の削減、工事期間短縮による道路利用者である一般市民への影響を低減する等、社会貢献も可能となります。将来的にはさらなるオープン化でインフラ事業者間だけではなく、車の自動運転時の危険予知情報としての活用も考えられます。
さらに、大規模自然災害時の設備故障情報(故障エリアや故障要因)を共有化することで、他社の故障状況をかんがみて、自社の点検エリアの優先度を選定することで、より精度の高い障害状況が把握でき、効率的な復旧計画の立案が可能となると考えます。

(左から)古角 康一/高木 洋一郎/村上 隆史

Smart Infra構想は、NTTグループのICTを活用し、社会インフラ事業者の抱えるさまざまな課題の解決をめざす構想です。社会の新しいシェアリングモデルをつくるべく邁進してまいります。ご興味・関心がある方、連携できそうな方、ぜひご一報ください!

問い合わせ先

NTTインフラネット
Smart Infra推進部
プラットフォーム戦略担当
TEL 03-5829-5270
FAX 03-3863-5437
E-mail si_pf_info@nttinf.co.jp