NTT技術ジャーナル記事

   

「NTT技術ジャーナル」編集部が注目した
最新トピックや特集インタビュー記事などをご覧いただけます。

グローバルスタンダード最前線

ITU-T SG5参加報告──ワット・ビット連携、ソフトウェアに関するカーボンフットプリント算定ルールについての標準化活動

ITU-T SG5は、環境、気候アクション、循環経済と電磁界(EMF:Electromagnetic Field)について検討しています。本稿では、2026年6月9~18日にソフィアアンティポリス(フランス)で開催された、2025-2028会期の第三回会合の審議内容概要と併せ、「ワット・ビット連携」フレームワークおよび「ソフトウェアに関するカーボンフットプリントの製品別算定ルール」の2つの新規作業項目(WI)承認に関してスポットを当てて、報告します。

小鯛 航太(こだい こうた)†1/大島 剛志(おおしま つよし)†2
原 美永子(はら みなこ)†3/山本 浩司(やまもと ひろし)†4

OREX SAI(元NTT研究企画部門)†1
NTTテクノロジーイノベーションセンタ†2
NTT宇宙環境エネルギー研究所†3
NTT研究企画部門†4

ITU-T SG5第三回会合の概要

2026年6月9~18日にITU-T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector) SG(Study Group)5 第三回会合(2025-2028会期)が、ソフィアアンティポリス(フランス)で開催されました。出席者は43カ国216名で日本から20名(6名は現地、14名はリモート)が参加しました。議長は Dominique Würge氏(仏・Orange)が務め、副議長はShuguang Qi氏(中国・CAICT)、Derrick Simiyu Khamali氏(ケニア・CA)、William Mnyippembe氏(タンザニア・TCRA)、Helen Nakiguli Sekasala氏(ウガンダ・UCC)、Beniamino Gorini氏(フィンランド・Nokia)、Daniel Dianat(スウェーデン・Ericsson)が現地参加しました。同じく副議長のKhaled Al Saleem氏(クエート・CITRA)、Rafia Barkat氏(アルジェリア・ARPCE)、Fatima Alouane氏(モロッコ・ANRT)はリモート参加でした(表1)。
審議された寄書件数は154件(うち、日本から2件)で、合意(Consent)された勧告案は新規15件、改訂9件、同意(Agreement)された文書は5件でした(図、表2)。

WP1/5(Working Party 1/5)-EMC(Electromagnetic Compatibility)、雷防護、電磁界

議長はBeniamino Gorini氏(フィンランド・Nokia)が務め、副議長のXia Zhang氏(中国CAICT)はリモートでの参加でした。課題1~4にて、改訂3件の勧告案について勧告化手続きを開始することが合意、補足文書(Supplement)1件の発行が同意されました。

■課題1/5:通信/ICTシステムの電気的な防護、信頼性、安全およびセキュリティ

本課題では、雷撃や接地、電力システムの妨害波に対する通信システムの防護要件を検討しています。また、高高度電磁パルス(HEMP)や高出力電磁パルス(HPEM)攻撃に対する防護方法、電磁波による情報漏洩リスク評価およびリスク低減方法等の電気通信設備の電磁波的なセキュリティ課題を検討しています。
AラポータのHuagang WANG氏(中国・China Telecommunications)が議事を進行しました。まず前ラポータ(中国、Dai氏)の退任に伴い、新たにラポータとして、Chen QIANG氏(中国・China Unicom)が任命されました。次に2件の寄書について検討が行われ、既存勧告K.87「電磁セキュリティ要求の適用に関するガイド-概要」については、勧告草案1版がNTTより提出され、用語の定義の修正と引用規格の見直し等が提案され、既存勧告K.105「無線基地局に給電する太陽光発電システムの雷防護」の改訂については、新規作業項目の検討開始が提案されました。両提案ともに合意され、引き続き検討を進めていくことになりました。

■課題2/5:雷および他の事象に対する防護のための装置の仕様と素子/デバイス

本課題では、過電圧や過電流に対する防護のための通信装置の防護要件や防護素子、デバイスの検討を行っています。ラポータの小林栄一氏(日本・NTT)が議事を進行し、6件の寄書について検討が行われました。既存勧告K.21「顧客宅内に設置される通信装置の過電圧・過電流に対する耐力」については、前回会合までで議論した、内線Ethernetポートの耐力や絶縁性能の要求に関する改訂内容を取りまとめた草案の寄書をNTTから提出して審議が行われ、合意(Consent)されました。既存勧告K.11「過電圧及び過電流に対する防護原理」に関し、過電圧防護に関する関連規格等の状況の反映を提案する寄書がNTTとインドからそれぞれ提出され、改訂のための検討開始が決定されました。また、補足文書(Supplement)K.Sup_tov「DC電源供給を受けるICT装置の過渡的過電圧(TOV)への防護」の発行が同意(Agreement)されました。

■課題3/5:電磁界に対する人体ばく露の評価

本課題では、携帯電話、無線システムのアンテナ周辺における電磁界強度の推定手順、計算方法、測定方法について人体ばく露の観点で検討を行っています。共同ラポータのHelen Nakiguli Sekasala氏(ウガンダ・UCC)が議事を進行し、14件の寄書について検討が行われました。既存勧告K.70「無線中継所近傍において、人体に対するEMFばく露を制限するための防護法」の改訂、新規技術文書KSTR-AI.EMF「5G NR基地局近傍における人工知能を用いたEMF評価手法」および既存補足文書K.Sup.14「ICNIRPやIEEEガイドラインより厳しい電磁界ばく露制限値を適用した場合の4G、5Gの携帯ネットワーク導入に対する影響」の改訂の3件について新規作業項目の検討開始が合意されました。
また各国の高周波電磁界ばく露に関する国内制限値情報を集計・提供する国際ポータルの設立が提案され、WP1/5プレナリにおいて、ポータルのフィージビリティ評価結果を次回のSG5会合にてSG5事務局より提供することになりました。

■課題4/5:通信/ICT環境におけるEMC問題

本課題では、新たな通信装置、通信サービスや無線システムに対応したEMC規格の検討と既存勧告のメンテナンスを行っています。共同ラポータのBeniamino Gorini(フィンランド・Nokia)およびXinghai Zhang(中国・Huawei)が議事を進行し、4件の寄書について検討が行われました。既存勧告K.74「ホームネットワーク装置の電磁両立性、耐力および安全に関する要求」およびK.92「ホームネットワークの電磁環境及び妨害波測定方法」の改訂草案について審議が行われ、合意(Consent)されました。また、これら2件の勧告を改訂するための新規作業項目の作成も行われました。

WP2/5-新しい電気通信/ICT設備およびアプリケーションの環境効率

議長はPaolo Gemma氏(中国・Huawei)、副議長はYing SHI氏(中国・China Telecommunications)が務めました。課題6、7、13においては、新規3件および改訂6件の勧告案について勧告化手続きを開始することが合意、2件の補足文書(Supplement)の発行が同意されました。

■課題6/5:電気通信/ICTの環境効率

本課題は、電気通信/ICTやメタバースなどの新規先端技術に対する環境効率に関する課題の検討を行っています。共同ラポータのMagnus Olsson氏(中国・Huawei)とYing Shi氏(中国・China Telecommunications)が議事を進行し、40件の寄書について検討が行われました。既存勧告L.1203「ICTシステム向けの400Vまでの直流給電におけるケーブル色による識別」、L.1331「移動網のエネルギー効率に関する評価」の改訂草案、新規勧告案L.FR-ESC「環境持続性のあるコンピューティング向けフレームワークと要件」、L.IEDL「深層学習コンピューティング向けITサーバ省エネ戦略」、L.Energy_sav_Cloud&Edge「クラウド・エッジ協調を踏まえたデータセンタ向けエネルギー節減設計」の勧告草案について審議が行われ、合計5件について勧告化手続きを開始することが合意されました。新規作業項目として既存勧告L.1220「エネルギー貯蔵システム技術の概要」およびL.1300「グリーンデータセンタのベストプラクティス」の改訂、新規勧告L.AIA_RS「環境効率の良いデータセンタインフラ向けリソーススケジューリングにおけるAIエージェントのフレームワーク」、L.EE_Token「AI推論におけるエネルギー効率及び炭素効率のためのトークンベース評価フレームワーク」、L.CTS_CP「計算能力と電力の協調制御を考慮した計算タスクスケジューリングのフレームワーク」、L.WBC-FR「産業発展に向けた分散DC間のワークロードシフト(ワット・ビット連携)に関するフレームワーク」、L.NEE_DCI「データセンタを相互接続する広域ネットワークのエネルギー効率評価」、L.HESS-AIDC「AIデータセンタ向けハイブリッドエネルギー貯蔵の一般的な要件」、L.GLOC_DC「データセンタにおける水冷システムの環境配慮かつ低炭素な運用制御に関するガイドライン」、新規補足文書L.Sup.Ex_RAN_emis「モバイルネットワークのCO2e排出測定に関する実例」、ならびに新規技術文書LSTR-DC-WaterEnv「自然地表水冷却を用いたデータセンタ向けの水の環境持続可能性評価フレームワーク」の11件について検討開始が合意されました。また、新規補足文書L.Sup.MDEE「多次元ネットワークのエネルギー効率指標に関する研究」の発行が同意されました。L.fra_cooling「ICT実装に向けた冷却技術に関する機能要件とその採用」については検討を終了することが同意されました。

■課題7/5:電子廃棄物、循環経済、持続可能なサプライチェーン管理

本課題は、循環型経済の考え方、サプライチェーン管理の改善をベースとした電気通信/ICTに対する環境要件、および製品・ネットワーク・サービスに関する環境性能に対するeco-ratingやデジタル製品パスポート(DPP)などのプログラムの検討を行っています。共同ラポータのSusanna Kallio氏(フィンランド・Nokia)とHoda Shakra氏(エジプト・MICT)が議事を進行し、25件の寄書について検討が行われました。既存勧告L.1022「サーキュラーエコノミー:ICTにおけるサーキュラーエコノミーの定義及び概念」の改訂草案、同じく既存勧告L.1004「モバイル端末向けユニバーサル高速充電ソリューション」、L.1037「電子廃棄物に対する収集、事前処理、分解、価格安定、最終廃棄に向けたガイドライン」、L.1041「一対の撚線ケーブルを使った資源節減、電子廃棄物削減、エネルギー節減システム方法」の訂正草案について審議が行われ、合計4件について勧告化手続きを開始することが合意されました。新規作業項目として、新規勧告案L.Digital_EPR「拡大生産者責任(EPR)制度のデジタル化と相互運用可能な実装のためのフレームワーク」、L.QA_AI「再利用のためのAI計算能力資源の品質評価及び検証」および新規補足文書L.Sup.9RC「ICT製造業者向けの循環性に関する対策及び戦略の導入に関するガイダンス」の3件について検討開始が合意されました。また、新規補足文書L.Sup.GSP「ICT製造業のグリーンサプライチェーン管理に向けた原則」の発行が同意されました。

WP3/5-ネットゼロ排出に向けた気候変動対策のための新しい電気通信/ICTソリューション

議長はShuguang Qi氏(中国・CAICT)、副議長はJean-Manuel Canet氏(仏・Orange)、原美永子氏(日本・NTT)、Sangjin Jeong氏(韓国・ETRI)が務めました。課題9、11、12では、新規7件の勧告案について勧告化手続きを開始することが合意、2件の補足文書(Supplement)の発行が同意されました。

■課題9/5:他セクターへの影響を含む、電気通信/ICTが気候変動、生物多様性、環境に及ぼす影響の評価

本課題は、パリ協定および国連による持続可能な開発目標と整合した開発トラジェクトリ(方向性)とするための電気通信/ICT、AI、IMT-2020(5G)等に対する持続性影響評価手法およびガイダンスの開発、気候変動と生物多様性課題の重要性を踏まえてこれらの課題に焦点を当てた検討、そして経済、環境、社会的な観点での評価を含む、より広い持続性を持つ開発評価の中で環境評価手法がどのように使われるかについての検討を行っています。ラポータのJean-Manuel Canet氏(フランス・Orange)が議事を進行し、41件の寄書について検討を行いました。新規勧告L.Env_DC「データセンタ向け多次元の炭素指標とマネジメントに関するガイドライン」、L.Carbon_DA「炭素排出検証ナレッジグラフのデータアノテーションに関するガイドライン」、L.PCF_Server「サーバのCO2排出量評価に向けたガイドライン」、L.PCF_Smartphone「スマートフォンのCO2排出量評価に向けたガイドライン」、L.BatteriesLCA「ICT用途におけるリチウムイオン電池製品のCO2排出量評価に向けたガイドライン」の勧告草案について審議が行われ、5件について勧告化手続きを開始することが合意されました。新規作業項目については既存勧告L.1400「ICT環境の影響評価方法に関する概要及び一般原則」の改訂、新規勧告L.CCEP_CRA「計算資源と電力の協調運用による炭素削減効果の評価方法」、L.PCF Management「通信事業者のサプライチェーンにおけるICT機器のカーボンフットプリント削減のためのガイドライン」、L.PCRSoftware「カーボンフットプリント-ソフトウェアのための製品別カテゴリ規則」の4件について検討開始が合意されました。また、新規補足文書L.Sup.CE_Shared_BS to ITU-T L.1420「複数事業者の共用基地局におけるCO2排出量の配分方法」の発行が同意されました。

■課題11/5:気候変動緩和およびスマートエネルギーソリューション

本課題では、運輸・建築・製造などの他業界向けの電気通信/ICTを用いた気候変動緩和の促進のためのスマートエネルギーソリューションの要件、およびスマートグリッド/スマートエネルギーソリューションへの相互接続を考慮した給電システムのインタフェースとプロトコルの仕様に関する勧告を策定しています。ラポータのSangjin Jeong氏(韓国・ETRI)が議事を進行し、12件の寄書について検討が行われました。新規勧告L.GEMS_VPP「仮想発電所環境のためのGHG排出管理システムのフレームワーク」の勧告草案について審議が行われ、勧告化手続きを開始することが合意されました。新規作業項目として、新規勧告L.FADR「エッジ駆動型自動需要応答のフレームワーク及び機能要件」、L.SESS「気候変動緩和のための再生可能エネルギー発電をサポートする共有バッテリーベースの蓄電システム統合管理プラットフォームのフレームワーク」、L.FR_CEC「気候変動緩和をサポートする計算能力と電力の協調制御に関するフレームワーク及び要件」、L.Platform_CEC「気候変動緩和のための計算能力と電力の協調制御プラットフォームの要件」の4件について検討開始が合意されました。また新規技術文書LSTR.GHG-DR「GHG排出係数に基づく電力網デマンドレスポンスのメカニズム及びフレームワーク」の発行が同意されました。

■課題12/5:持続可能でレジリエントな電気通信/ICTによる気候変動対策および気候変動適応

本課題では、地方およびシティにおける気候レジリエンスの強化に向けた気候変動の緩和と適応、低コストかつポータブルなICTソリューションの技術的な仕様、エネルギー効率の要件・指標・KPI・測定法に関する勧告を策定しています。共同ラポータのMessrs Derick Simiyu Khamali氏(ケニア・CA)とRumeng Tan氏(中国・China Telecommunications)が議事を進行し、11件の寄書について検討が行われました。新規勧告L.ICT_VPP「気候変動緩和に向けたICTベースの仮想発電所の評価フレームワーク及び方法論」の勧告草案について審議が行われ、勧告化手続きを開始することが合意されました。新規作業項目として、新規技術文書LSTP-ICT4DR「気候変動適応及び災害レジリエンスのための新興ICTの活用に関する戦略的技術ガイド」の検討開始が合意されました。同じく新規作業項目として提案されたL.PT_Sharing「気候変動緩和のための電柱及び電波塔の共有に関するベストプラクティス」についてはWP3/5プレナリにてQ6/5に移行されることが同意されました。新規勧告L.LCArural「地方における気候変動適応に向けた低廉で持続可能なICTソリューション」については新規技術文書に変更することが同意されました。またオープニングプレナリではRumeng Tan氏(中国・China Telecommunications)が新たにラポータとして任命されました。

「ワット・ビット連携」フレームワークの新規作業項目(WI)承認

本会合において、日本主導の「ワット・ビット連携」に関する新規作業項目(NWI:New Work Item)が承認された審議結果と、そこに至る国際交渉の動向について報告します。

■日本提案の概要と背景

近年、生成AI(人工知能)の普及に伴い、データセンタ(DC)が消費する電力量の爆発的な増加が世界的な課題となっています。これに対し日本は、計算資源の処理(Bit)とエネルギー供給(Watt)を動的かつ有機的に同期最適化させ、インフラ全体の省電力化を達成する「ワット・ビット連携」のコンセプトを提唱してきました。
今会合において、日本は新規勧告草案 L.WBC_FR(Framework for Industrial Advancement through Distributed Data Centre Workload Shifting for Watt-Bit Collaboration)を提案しました。本提案は、国内における「ワット・ビット連携官民懇談会」での議論や方針に深く根ざしたものです。小規模から大規模におよぶ分散データセンタ環境において、サービス品質(QoS)を担保しつつ高度なワークロードシフト(計算負荷の移転)を実現するためのクロスドメイン連携フレームワークおよび電力・ICTシステム間のインタフェース要件を規定することを目的としています。
本提案の標準化にあたっては、NTTをはじめ、国内キャリア、ベンダ、アカデミアといった、日本の産学官におよぶ多数の主要団体が日本提案の支持メンバ(Supporting Members)として参画し、共同提案を行いました。

■他提案との重複問題およびNTT主導の合意形成

今会合の審議においては、計算力と電力の協調(Co-ordination)を巡り、海外の企業・団体等からも複数の新規WI提案が提示されました。具体的には、China Telecom、CAICT(China Academy of Information and Communications Technology)、State Grid Corporation of China、China Unicomなどによる3件の提案です。
これらの提案と日本提案は、いずれも「計算資源と電力の協調」という共通のテーマを扱っていたため、会合の議長や他国から作業の重複(Overlap)および二重化(Duplication)が指摘され、提案の統合を含めた議論が行われました。
この課題を解決するため、会合期間中に現地でのオフラインディスカッションが重ねられました。この調整においてNTTが主導的な役割を果たし、各提案が対象とする利用シーンや技術的スコープの差異を明確に切り分けました。議論の整理として、日本提案が持つ独自の技術領域や特徴を論理的に説明し、各提案の棲み分けを行いました。
交渉の結果、最終的に「4つの独立した新規作業項目(WI)」をすべて完全並列として、同時に立ち上げることで全会一致の合意(Consensus)に達しました。合意された4つのWIは以下のとおりです。
・L.WBC_FR(日本):Framework for Industrial Advancement through Distributed Data Centre Workload Shifting for Watt-Bit Collaboration
・L.CTS_CP(China Telecom):Computing Task Scheduling Framework considering Computing power and Electric Power Coordination
・L.FR_CEC(CAICT等):Framework and Requirements for Computing power and Electric power Coordination in support of climate change mitigation
・L.Platform_CEC(CAICT等):Requirements for computing power and electric power coordination platform for climate change mitigation

これにより、日本提案(L.WBC_FR)は独立した新規WIとしての承認を確保し、スマートエネルギー関連技術を専門に扱う作業班(Q6/5)にて検討されることが決定しました。
なお、今回の日本提案の承認は、ITU TSB(電気通信標準化局)尾上局長が主催する「ITU-T CxO Roundtable」でのハイレベル合意が、具体的な国際勧告策定の動きとして具現化したものです。Industry Engagement(産業界の巻き込み)を公約に掲げる同局長の活動成果を実証する、意義深い進展となりました。

■おわりに

本会合での合意形成により、日本発の「ワット・ビット連携」はITU-T SG5における重要な柱として国際標準化の作業を開始する体制が整いました。今後は、共通リファレンス等(L.FR_CEC)で合意されるユースケースや主要コンポーネントの検討進捗と歩調を合わせつつ、当初目標である2028年の勧告化(Consent)の完了に向けて、国内委員会、グローバルな関連メンバ、および産学官のパートナーと緊密に連携し、技術要件の精緻化を進めていきます。

「ソフトウェアに関するカーボンフットプリントの製品別算定ルール」に関する新規作業項目(WI)承認

本会合において、「ソフトウェアに関するカーボンフットプリントの製品別算定ルール」に関する新規作業項目(NWI:New Work Item)が承認された審議結果と、そこに至る議論について報告します。

■背景

2021年に開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)以降、日本を含む世界120カ国以上(2021年11月時点)が脱炭素化に向け、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げています。産業界においても、CO2をはじめとしたGHG(Greenhouse Gas)削減に向け企業のサステナビリティに関する情報開示を求める動きが加速しています。そのような中、ICT分野ではAI利用やデータ増加に伴いこれまで以上の電力需要の急増が見込まれ、これまでのハードウェア中心の対策に加え、ソフトウェア領域での電力効率化やGHG排出量対策が重要になっています。
GHG排出量に関するソフトウェア分野の課題については、法的強制力や削減価値の評価制度が未整備であること、削減に伴う手間やコストなどさまざまなものが挙げられていますが(1)、中でもソフトウェア自体が直接的に電力消費やCO2排出をするわけではないため、ソフトウェアが環境負荷を発生させていることを意識しづらく、環境問題に対する認知・意識がソフトウェア開発の現場に浸透していないということが考えられます。それゆえ、必要に応じてソフトウェアに関する金額ベースの排出量算定方法は存在するものの、金額によらず開発・運用中の削減努力が反映できる算定ルールが整備されておらず、ソフトウェアに関する精緻な排出量可視化が困難でした。
このような課題を解消すべく、NTTはじめ日本国内のソフトウェア関連企業が協力し「ソフトウェアに関するカーボンフットプリント(CFP)の製品別算定ルール」の議論を進めてきました。当該算定ルールの初版は、経済産業省の「令和5年度GX促進に向けたカーボンフットプリントの製品別算定ルール策定支援事業(2)」のサポートを受けて2024年3月に完成し公開(3)されています。その後も「日本環境倶楽部ソフトウェア分野の脱炭素研究会」(4)にて継続的にブラッシュアップの議論を重ね、ソフトウェアライフサイクル全体に対応するかたちで2026年3月には算定ルール第三版が公開されています。同研究会ではソフトウェア業界の脱炭素化に向け、算定ルール検討に加えてその展開や活用に向けた啓発活動を企業が連携して行っています。

■寄書概要

本会合では、上記ソフトウェアに関するカーボンフットプリントの製品別算定ルールの国際標準化をめざし、NTTはじめ関連する企業によって共同で「L.PCRSoftware“Carbon Footprint of Products-Product Category Rule(CFP-PCR) for Software.”」勧告の新規作業項目化が提案されました。
ITU-T SG5では長年、ICTと環境に関するさまざまな議論が行われており、数々のICTサービスや関連製品のCO2排出量の可視化指針が示されてきました。近年では、Green Software Foundation(5)のような新たなイニシアチブも活発に活動中であり、この分野はますます着目されていますが、ソフトウェア業界のCO2排出量削減のさらなる加速のためには、ビジネスベースでの排出量算定や開示を推進し、より低炭素なソフトウェアを選択できるようにする必要があります。そのためには、より具体的かつソフトウェアそのものに特化したグローバルなCFP算定ルールが必要であるとして寄書および関連議論が実施されました。

■議論と結果

以下の関連する既存規格(議論中のものを含む)との差異を明確にするための議論が重点的に行われました。
・ISO/IEC 21031 Software Carbon Intensity(SCI) specification
・ITU-T L.1410(Methodology for environmental life cycle assessments of information and communication technology goods、networks and services)
・ITU-T L.CFSP(Guidelines for the assessment of the carbon footprint of Software Products)(現在議論中)
・ICT Sector Guidance built on the GHG Protocol Product Life Cycle Accounting and Reporting Standard Chapter 6:Guide for assessing GHG emissions related to Software
特に、算定方法の記載レベル、ソフトウェアライフサイクルプロセスにおけるターゲットスコープ、規格の対象読者、という3つの観点で既存規格との差異が述べられたうえで提案項目の重要性が訴求され、最終的に当新規作業項目の立上げが承認されました。
本会合での合意形成により、日本企業が提案した「L.PCRSoftware」は原案どおり、既存の関連作業項目と独立したかたちで作業を開始する準備が整いました。今後は、現在進行形でブラッシュアップが進む国内版の算定ルールの検討進捗と歩調を合わせつつ、当初目標である2027年の勧告化(Consent)に向けてステークホルダと緊密に連携して進めていきます。

■参考文献
(1) https://www.rd.ntt/sic/2025/02/03/SIC-GreenSoftware-whitepaper-v1_1_j.pdf
(2) https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/kankyou_keizai/shien_productquantificationrules.html
(3) https://lca-forum.org/member/guidelines.html#kubun1-1
(4) https://www.kankyouclub.or.jp/activity/softwarekenkyu.html
(5) https://greensoftware.foundation/