2026年10月号
from NTTファシリティーズ
共感力×データ活用×運営サービスで、働き方・働く場を最適化――NTTファシリティーズのワークプレイスソリューション
働く場は、社員の能力発揮や組織文化の醸成、企業価値の向上を支える経営資源へと変化しています。NTTファシリティーズは、共感力・データ活用・運営サービスを強みとし、ワークプレイスの構想から定着までを支援しています。本稿では、自社オフィスのリニューアルを例に、データを活用した働き方に応じた場の最適化や、共創を促すICT・運営の工夫などについて紹介します。
経営資源としてのワークプレイスを支える、3つの強み
コロナ禍を経て、働き方の多様化はさらに加速し、働く場所は「毎日通う前提のオフィス」から、業務内容や目的に応じて選択するものへと変化しました。それに伴いワークプレイスを取り巻く環境も大きく変化しています。加えて、人的資本経営やウェルビーイング、エンゲージメント向上への関心が高まる中、オフィスは単なる執務スペースにとどまらず、社員の能力発揮、組織文化の共有、部門を越えたコミュニケーションを通じた新たなアイデアや価値の創出を促す役割がより一層求められています。
このような背景から、ワークプレイスは企業活動を支えるコストではなく、人材の成長と企業価値の向上に資する経営資源としての位置付けが強まりつつあります。こうしたワークプレイスへの期待の高まりは、これから社会に出るZ世代の意識にも表れています。当社ほかが2024年に900名のZ世代を対象に行った調査(1)では、人的資本経営に取り組む企業への入社志望度が高まる傾向がみられ、そうした志望者の9割以上が企業選びでオフィス環境を重視していることが分かりました。「健康や快適につながるような設備機器の導入」の志望度への影響も見られ、ワークプレイスへの取り組みが採用力やエンゲージメントを含む企業価値を高めるという考え方が、今や一般化しつつあります(図1)。
このような背景を基に、建物や設備といったハードの整備にとどまらず働く人々のための空間・環境・仕組みとして当社が提供しているのが、ワークプレイスソリューションです。これは、オフィスの計画・構築・運営を個別にとらえるのではなく、ファシリティマネジメントの視点から一体的に支援し、PDCAサイクルを通じて改善・最適化を継続するものです。
当社の強みは、このPDCAサイクルでの伴走にあり、その特長は3つに集約されます。
1番目は「共感力」です。ワークプレイス改革では、多様な関係者との調整、達成目標や予算の設定、専門的な工期・法令対応など、すり合わせるべき項目と機会が多く、納得感のある合意形成が難しい場合があります。さらに、大規模なワークプレイス改革やオフィスづくりは、企業にとって10〜20年に一度の取り組みになることも多く、十分な経験を持つ担当者が限られるためその進め方に悩むケースも少なくありません。
当社は経営層へのヒアリングや社員ワークショップを通じて、経営層が描く方向性と、社員が日々感じている課題、さらには表面化していないニーズまで丁寧に掘り下げます。そして、それらの声を基に「めざす働き方」を明確にし、それを支えるワークプレイス像へと翻訳しながら、関係者の間に共通認識をつくっていきます。長年培ってきたファシリティの知見を活かし、構想にとどまらず、空間・機能・運用の観点から、お客さまとともにめざすワークプレイス像を具現化しています。完成後も継続的な改善をサポートし、お客さまのプロジェクト事務局だけでなく社員も巻き込みながら、「働き方の高度化」に向けて複雑な課題にこたえていきます。
2番目は「データ活用」です。お客さまの課題に応じて調査・分析メニューを適切に組み合わせ、最適で納得感のあるプロセスで要件を整理・明確化します。独自のアンケート「ワークスタイル診断・重要度満足度調査」では、ワークシーンや空間・ツールの強化ポイント、働き方・働く環境の優先課題を分析し、施策の具体化やKPI設定などにつなげています。
また、同時出社率や組織別出社率、スペースの稼働率などのデータを多角的にとらえ、規模や配置の適正化に向けて計画へ反映します。さらに「アクティビティ分析」では、オフィスで行うべき活動を、集まる効果や活動人数の観点から整理・明確化するなど、主観的・客観的な各種データを用いてオフィスの整備効果の最大化を図っています。近年は、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(現:合同会社デロイト トーマツ)と共同開発した手法NEBs(Non-Energy Benefits:省エネ建築物の副次的効果)*1による効果シミュレーションも実施し、「働く場の最適化」に取り組んでいます。
3番目は「運営サービス」です。オフィスは整備して完了するものではなく、運用・改善を重ねながら利用価値を高め続けることが重要です。飲食サービスや音響・植栽でエンゲージメントを高める「生活支援」、ホテリングなどのICTを含めた「業務支援」、社内外の多様なコミュニケーションを生む「イベント企画・運営」、それら全体をトータルにマネジメントしPDCAで改善する「運営企画・管理」をNTTファシリティーズグループとして提供しています。これらの手法は自社オフィスでも実践しています。
*1 NEBs:健康増進や知的生産性の向上、事業リスクの低減といった、人と経営にもたらす多様な便益を客観的な経済価値として数値化したもの。従来のエネルギー評価に人と経営の視点を加え、建物がもたらす副次的効果をも数値化した総合指標。

働き方・働く場を最適化した自社オフィス
これまでに紹介した当社の3つの強みを活かして、「自律・相乗・創発を実現する・新しい働き方の推進」を目的に据えた自社の本社オフィスリニューアルを2025年に実施しました。この「自律・相乗・創発」は、当社パーパスにおける「チャレンジの実現に向けた行動姿勢」であり、働く場を通じて社員1人ひとりの挑戦を後押しすることをめざし、整備を進めました。
ハイブリッドワークを前提とした働き方において、当社では出社を「義務」ではなく「価値ある選択」と位置付けてオフィスのあり方を考えました。生産性と柔軟性を両立し、経営に貢献するオフィスを実現するため、グランパークタワー(東京都港区)ほか3ビルに分散していた4拠点を集約しました。居ながらの玉突きリニューアルを経て、2025年7月に全面オープンを迎えました(図2)。

データ分析と共感力でつくる、自律的に選べる働く場
リニューアルプロジェクトのスタートにあたり、これからの「オフィスに求める機能は何か」を定めるために、出社の意義である「Face to Faceでの活動」が生み出すもの、それに期待する性質を3つに整理しました。それが、スムーズな会話や空気感を生む「同時性」、相互理解を深める「共感性」、想定外の発想を生む「偶発性」です。
本社組織(約2000名が所属)の業務を3000項目超のアクティビティに分解し、それぞれを「同時性・共感性・偶発性」の評価軸=集まることの効果として分析。その結果、オフィスで行うことで効果が高まると考える活動は全体の約30%であることが分かりました。この結果を基に、「集まることの効果」と「活動人数」の2軸で活動を4つのゾーンに分類しました(図3)。オフィスで行うべき活動を見極め、必要な機能や空間・規模の検討につなげました。
また、活動分析の結果を踏まえ、活動に応じて社員が自律的に場を選ぶABW(Activity Based Working)を取り入れ、個人作業や組織内共創などの小さな活動を支える「執務エリア」と、組織を超えた大きな活動を支える社内外共創スペース「FL@T(フラット)」を計画しました。
併せて、全館でフリーアドレスを採用し、データを基に把握した「組織ごとの出社ピークのずれ」で生じる余剰席を有効活用しています。FL@Tは社員ワークショップから「感じる、つながる、やってみる」というコンセプトを導き、名称も全国の社員募集・投票で決定するなど、社員参画によるプロセスをさまざまなフェーズに取り込んでいます。
社員参画・オフィスの運営における特徴的な取り組みの1つに、Web上のバーチャルオフィスツアーによる情報発信があります。オフィスリニューアルのプロセスの中で、リアルのオフィスに先行して3Dでバーチャルオフィスを竣工しました。社員が完成前の空間を体感できるよう工夫することで、新しい働き方をあらかじめイメージし、導入後の利用促進や定着支援を行っています(図4)。


■ ICTで支える、場所を超えた共創と自律的な働き方
共創を支える仕組みの1つとして、FL@TではさまざまなICTツールを活用した働き方にも挑戦しています。拠点間を等身大映像でつなぐ「OPEN HUB Window」*2は、本社オフィス、大阪オフィス、武蔵野研究開発センタの3拠点を接続し、まるで一続きの空間にいるような臨場感あるコミュニケーションを実現します。各種イベントをはじめ、場所を超えた共創につながる利用シーンの拡大を進めています。
また、アイデア出しや会議の活性化を目的に生成AIを活用したブレストツールのトライアル実施や、つながりのある社員の出社が通知される「交流支援機能」を持った座席予約ツールの導入など、新たな働き方や共創・コミュニケーションを促進する環境づくりにも取り組んでいます。
*2 OPEN HUB Window:NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)が2022年2月に開設した最先端技術を備えたワークプレイス「OPEN HUB Park」発のコミュニケーションツールで、遠隔拠点とのリアルタイムかつ臨場感のあるコミュニケーションが可能。
■ リニューアルの効果と、場を育てるワークプレイス運営
今回のオフィスリニューアルでは、精緻に分析した働き方に沿ってワークポイント*3数設定や機能配置を行った結果、オフィス面積は1万4500m2から7650m2へ47%削減に至りました。一席当りの面積は整備前と同水準を維持し、ワークポイント(席)の使用率は20%前後から50〜80%へ大幅に改善しました。この最適化の中で生み出されたのがFL@Tです。
社員のエンゲージメント調査では、働く環境への満足度も向上しています。「自身の作業環境で効率的に働けているか」は+12ポイント、「コラボレーションが実現できているか」は+4ポイント改善し、社員の意識に確かな変化が生じました。また、賃料・水光熱費は年間約2億円削減、健康増進・知的生産性向上の効果はNEBsにより年間約4000万円と試算しています。
また、FL@Tでは開設後1年間で約400回のイベントが開催され、社員による自発的な活動が全社に広がっています。こうした活動を支えるため、コミュニティマネジャーを配置しました。植栽やサウンド・アロマによる心地良い環境づくりやライブラリの運用、ロボット活用のトライアルなど、日常の業務支援や利用体験を高める取り組みを継続しています。日々の運営を通じて、場をつくって終わりにせず、社員が自然と集まり、使い続けたくなるオフィスへと育てています。
オフィスに「完成」はありません。それは、働き方やニーズの変化を日々とらえながら、試し、学び、進化させていくものです。当社のオフィスは現在進行形で「やってみる」を実践し続ける、働き方の未来を先取りする実践フィールドです。
社員の声を受け止めるとともに、データで実態をとらえ、課題をより深いところまで追求して働き方・空間・運用を一体で見直すための打ち手へと変えていく。さらに、運営を通じてその効果を検証し、改善を重ねる。この循環こそが、当社のワークプレイスソリューションの源泉です。NTTファシリティーズはこれからも、働き方と働く場の最適化を通じて、企業価値の向上に貢献していきます。
*3 ワークポイント:快適に執務ができる席・ポイント。そのため、同じ座席数でもレイアウトや什器のタイプ(立ち席も含む)によってワークポイントとカウントするかどうかは異なります。
