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ソリューションサービスの今

ニューノーマル時代におけるマイバトラー誕生秘話

NTT東日本デジタルデザイン部では、新型コロナウイルス禍におけるニューノーマルな働き方をめざしたオフィスDX施策において、これまで注目されづらかった共通業務に着目し、個人個人の執事のように支援をしてくれる「マイバトラー」の開発を行っています。また、内製化開発推進のため、「DXラボ」というバーチャル組織を立ち上げ、そのアプリや機能をPoC(Proof of Concept)開発やオフショア開発を行うことで、「短期間で」「安価に」「ユーザ目線に立った」開発を進めています。

下條 裕之(しもじょう ひろゆき)
NTT東日本

リモートワークにおける業務課題に着目

2020年4月新型コロナウイルス感染拡大防止を目的に、緊急事態宣言が発出され、これまで在宅勤務等のリモートワークを実施していなかった企業もリモートワークを行うようになる等、働き方改革が早急に進められてきました。
一方、さまざまな調査結果をみても、コミュニケーションツールの導入は進んだものの、リモートワークで必要となるその他のツール導入は進んでいないのが現状です。
NTT東日本デジタルデザイン部では、新型コロナウイルス禍より以前からデジタルトランスフォーメーション(DX)を行う際に、共通業務のDXが進んでいないことに着目をしていました。コロナ禍において共通業務のDXが進んでいないことがリモートワークにおける業務課題になると見極め、SaaS(Software as a Service)などと連携した「マイバトラー」シリーズの開発を加速することとしました。

共通業務のDX

共通業務のDXを語る前に重要なのが、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉の定義です。さまざまな定義がありますが、単なる「デジタル化」とはすみ分けていく必要があると考えています。私たちは、単一作業のシステム化やツール化は単なる「デジタル化」であるのに対し、そのデジタル化した作業を業務フロー全体、もしくは抜本的に見直し効率化できている状態のことを「デジタルトランスフォーメーション」と定義付けています。
今回、私たちは共通業務のDXを推進するため、オフィスDX施策の検討を開始することとしました。

あなたの執事「マイバトラー」誕生

共通業務のDXを進めるにあたり、それを助けるのはどのような存在かを考えたときに、それはまるで「執事」のような存在なのではないかと考えました。それをヒントに「マイバトラー」という共通業務を助けてくれるツールのシリーズが誕生しました(図1)。
まずは自分たちが在宅勤務で困ったことをかたちにすることを目的に、在宅勤務中も鳴り響く会社の代表電話に着目しました。
在宅勤務中で会社貸与携帯を持っていない担当者は代表電話の用件が把握できない。そんな課題感から生まれたものが「テルバト」です(図2)。
テルバトは電話のAI(人工知能)自動応答機能botです。
リモートワーク中、オフィスの代表電話に電話がきてもIVR(Interactive Voice Response)で自動応答。会話内容はAIで文字に起こしてメールに転送してくれます。
テルバトがいれば、もうテレワーク中に出社する必要はありません(図3)。

内製開発推進のためのバーチャル組織「DXラボ」設立

「DXラボ」は内製部隊とグループ会社の海外開発拠点と協業し、ワンチームとして開発を推進するバーチャル組織です(図4)。
デジタル技術のPoC(Proof of Concept)開発と人材の育成を目的としています。これまでのNTT東日本は、プロジェクトマネジメントの役割を多く担ってきましたが、今後は自分たちでソフトウェア開発を推進できるような人材を育てていく必要があります。そこで、今回立ち上げたDXラボは、SaaSのプロダクト開発を行う組織であると同時に、ソフトウェア開発人材を育成することもめざしています(写真)。
現在、DXラボでは前述のマイバトラーシリーズ開発を中心に行っており、第1弾として秘書担当の業務のDXを行うため、秘書担当とともに「秘書バト」を約2週間で開発し、β版運用を開始しています。やりたいことをまず自分たちでつくって使ってみるという開発体制の中でみえてきたことは、単純なアジャイル開発ではなく、ユーザと対等に話し合いながら開発を進めることで、ユーザ自身も気付けなかった課題を見つけながら進めていけることが内製開発の良いところだと考えています(図5)。

今後のマイバトラー展開とDXラボ活動

マイバトラーは現在、個々の作業を「デジタル化」するツールとなっていますが、DXを行うために、各機能のユーザインタフェースを統合していきたいと考えています。まずは社内で使ってみてNTT東日本社員約4万人の業務効率化を進め、その実績を基に社外のお客さまにも販売できるよう検討を進めていきます。
また、DXラボのもう1つの設立目的である人材育成のため、自組織の社員だけでなく、他組織の社員を受け入れ、社内で副業をするような働き方で内製開発のノウハウを身につけ、自組織に戻ってからもDXラボと同じような開発サイクルを回すことのできる人材を拡大できるよう育成面にも力を入れていきます。
ニューノーマルな時代だからこそ、新しい手法やツールを積極的に取り入れ、今までにはなかったようなプロダクトを創出していきたいと考えています。

下條 裕之

ニューノーマルな働き方が求められる中、多くの方々がまだ完全に移行する準備が整っているわけではないと思います。DXラボのような内製化開発はこの時代だからこそ大事になってくると考えています。新しい時代をつくるためにDXラボは引き続き進んでいきます。

問い合わせ先

NTT東日本
デジタル革新本部 デジタルデザイン部
TEL 03-5359-3939
E-mail dd_dx-strategy@east.ntt.co.jp
URL https://www.d3.ntt-east.co.jp/