特集2
持続可能な社会の実現に向けたシェアリングビジネスの取り組み
- 持続可能な社会
- 共同施工
- シェアリング
NTTインフラネットのミッションである「地域社会の課題解決と価値創造に取り組み持続可能な社会を実現する」に向け、今後一層力を入れていく「シェアリングビジネス(共同施工)」における各種取り組みと今後の展望について紹介します。
西内 克成(にしうち かつなり)
NTTインフラネット
地域社会の各種課題とその解決に向けたシェアリングビジネス
各行政・各インフラ事業者では「設備の老朽化」「災害への対応」「行政職員の減少」「工事費の抑制」等、さまざまな課題を抱えており社会全体の課題となっています。
これらの課題を解決していくには、事業者単位で個々にオペレーションを行っていくのではなく、インフラを社会全体のものとして捉え、各事業者が協力しながら対応し、その中で価値を見出して課題解決していく「ソーシャルインフラ」という考え方が重要だと考えています。
NTTインフラネットでは、「シェアリングビジネス」のさらなる推進を着実に実施していくことで、社会課題解決の一翼を担い、他企業との共創という新たな価値創造へとつなげていくことにより、サステナブルで豊かな社会の実現をめざしていきます。
シェアリングビジネスとは
当社は、1999年の創業以来、NTTグループが全国に保有する通信基盤設備の維持・運用に関する業務を一元的に実施してきた「設備管理のスキル・ノウハウ」を持っている強みがあります。また、設備管理を通じた国・自治体・各ライフライン企業との交渉・調整および調整を通じて工事〔CCB(Concrete Cable Box)、BOXカルバート、橋梁、上下水道等〕を受託してきた実績があります。
これらの強みと国・自治体・各インフラ事業者・民間企業が実施する各事業をシェアリングすることにより、安心・安全・快適な街づくりに貢献してきました。
NTTが保有する設備は主に道路に占用しているため、道路管理者が実施する道路事業等が起因となりNTT設備の支障移転が生じ、それに並行するように他社の設備でも同様に支障移転が発生することが多くあります。通常であれば「他社工事の実施」「NTT工事の実施」と連続して工事を行うこととなりますが、地域住民の皆様にとっては「また同じところをなぜ掘っているのか?」と思われ工事の影響を長期間受けることになります。
そこで、当社が持っている強みを活かし、他社および道路管理者との調整・協議を行い、同一掘削断面で他社設備およびNTT設備の支障移転、さらには公共工事の一部も受託し一緒に共同施工を実施することで「掘削回数の低減」「掘削土量の軽減」「工事期間の短縮」「通信の安全確保」等、さまざまな効果を発現させることができ、「住民の皆様への影響軽減」「地球環境の保護」「交通空間機能の確保」「工事コストの削減」へつなげることができるものです(図1)。
これまでの主な実績
シェアリングビジネス(共同施工)の主な起因である支障移転工事を計画する際は、「NTT設備、ひいては情報通信の安心・安全を守る」という使命のもと、各行政と協議を実施したうえで計画しており、その件数は年間約1800件にも及んでいます。これまでNTTインフラネットで実施してきた「シェアリングビジネス(共同施工)」は、2020年度69件、2021年度120件、2022年度95件、2023年度133件と着実に実績を積んできており、支障移転工事に対する実施率は約8%(2023年度時点)となります。
シェアリングビジネス(共同施工)の技術的な工夫
シェアリングビジネス(共同施工)として受託してきた主な公共事業は、橋梁架け替え工事、電力、ガス、上下水道、舗装本復旧、河川BOXカルバートなど多岐にわたります。このように、NTTインフラネットでは、通信土木工事のみならず、一般土木工事についても数多く対応し、シェアリングビジネスを進めるうえで多くの技術的工夫を企画・提案してきました。以降、実施してきた主な技術的工夫について紹介します(図2)。
(1) 活線移設
ケーブルの撤去、新設、切り替えを実施しないで活線のまま管路ごと移設するものです。ケーブル切り替え工程を削減できるため、工期短縮・工事費削減に大きく貢献できます。
(2) BOXカルバート横引き工法
通常BOXカルバートはクレーンなどで設置しますが、クレーン設置個所の確保、架空線の撤去・仮移設等を伴います。横引き工法では、架空線の移設回避とクレーン設置個所の軽減が図られ、事業全体の工期短縮、移設工事費の大幅削減を図ることができます。
(3) ワイヤーソーにより橋梁分割撤去
橋梁上部工や下部工(橋台)の撤去時に有効な工法です。NTT設備や他社の設備が取り壊す橋梁に近接設置されていて、ブレーカーなどによる破砕取壊しが困難となる場合に有効で振動騒音の軽減も図れる工法です。
(4) 放電破砕工法によるフーチング(底盤)撤去
橋台フーチング部は取り壊すコンクリートのボリュームが大きく、振動、騒音が多く伴ってしまいます。放電破砕工法は連続騒音や振動の発生を抑制でき、市街地での取り壊しに有効な工法です。
(5) ハイブリッドBOXカルバート(現場打ちと2次製品の併用活用)
地下鉄、地下歩行空間BOXカルバート、NTTとう道と3層構造となる工事で採用しました。断面方向の設置スペース確保を目的に、とう道下半分と地下歩行空間上床版を現場打ちコンクリートで一体構造とし、とう道上半分を2次製品にして工期短縮を図ったものです。
おわりに
NTTインフラネットでは、従来の支障移転起因の共同施工はもとより、各行政および他企業との共同施工も実施してきました。今後は、各事業それぞれで実施してきた共同施工を一体的に運営することにより、さらなる経験値の向上や他事業との相乗効果を高めて進めていき、「シェアリングビジネス(共同施工)」の実施率向上をめざしていきます。
また「シェアリングビジネス」における今までの経験をさらに全国へ水平展開していくためには、業務上における数多くの課題解決を図っていく必要があります。これら課題を1つひとつ着実に解決していき「シェアリングビジネス」の発展・さらなる推進を図ることにより、「地域社会の共創パートナー」として成長を遂げていきたいと思っています。
西内 克成
問い合わせ先
NTTインフラネット
ソーシャルインフラデザイン本部 ビジネス推進部 社会基盤ビジネス推進部門
TEL 03-6381-6222
社会基盤ビジネス推進部門は、「シェアリングビジネス」のさらなる推進を着実に実施していくことにより、さまざまな社会課題の解決に向け貢献していくことでより存在価値を高め、新たな価値創造(他企業との共創〈シェア〉)へとつなげ、サステナブルで豊かな社会の実現をめざしていきます。