特集2
新たなニーズに対応した社会インフラ構築の取り組み
- 再生可能エネルギー
- データセンタ
- ネットワーク
カーボンニュートラル、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みなど、再生可能エネルギーへの注目度が高まっており、太陽光・陸海風力発電を主とした大規模な開発が加速しています。また、2022年にデータセンタの市場規模は2兆円の大台に乗り、クラウド技術の発展によりニーズが高まり、今後もさらなる規模拡大が予想されています。NTTの通信土木設備の構築や維持管理を一元的に管理するNTTインフラネットは、その技術とノウハウを、再生可能エネルギーやデータセンタのルート構築に展開しています。
井ノ口 太郎(いのぐち)
NTTインフラネット
再生可能エネルギー自営線構築事業
NTTグループが全国で所有する膨大な通信ネットワークは架空配線や地下配線、橋梁添架などさまざまな占用形態で構築されています。特に通信土木設備を建設、保守しているNTTインフラネットは、長年培ってきた高い技術力とノウハウに加え、47都道府県全てに拠点を持っていることで全国の案件に対応できる体制を活かしたビジネスを展開しています。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が注目されメガソーラー建設が進む中、当社は2016年に「自営線構築事業」を立ち上げ東北エリアをはじめ、東海、四国エリアに事業を広げ、今では全国各地の太陽光発電や風力発電の開発に取り組んでいます。通信土木の構築ノウハウを電気分野に活かして「再エネ自営線構築」を進めています。自営線構築延長は、事業化当初数kmから長くても20km程度でした。FIT価格低下に伴い、発電効率アップや事業個所が特定されたここ数年では40kmを超える事業もあります。距離が増すほどネック個所も増えて複数ルートの検討が必要となってきますが、これまでの多くの実績からスピーディなルートコンサルティングを実現しています。
発電事業者が要望する自営線の共通ポイントは「占用ルート・費用・スケジュール」です。私たちに与えられる条件は発電所から供給先の位置と発電規模であり、その間をつなぐルート検討から始まります(図)。
■ルートコンサルタント
発電規模から通電電流を想定し、ケーブル・電線の仕様を暫定的に決めます。次に管路・マンホールサイズを検討し、既設道路やインフラの状況を確認しながら、ネック個所の課題をクリアできそうな最適ルートを提案します。自営線ルートは一般の公道を占用するだけでなく山間部の林道を占用する場合も多く、鉄塔架空によるショートカットも視野に検討を進めます。民地を利用した設備構築のケースもあり、自営線ルートの決定は発電事業者、施工者が地域住民の理解を得ながら取り組む姿勢が必要不可欠です。複数のルート案を検討のうえ発電事業者と協議を重ね、自営線ルートを決定していきます。
■詳細設計・占用申請
次は詳細設計と占用申請ですが、図面作成を進めつつ道路管理者や河川管理者、時には地権者との交渉も含め自営線設計を固めていきます。既存のインフラ事業者との協議も重要で、特に架空配線では地域電力会社の電線離隔協議を中心に実施します。地下配線で配慮する点は、水路などの暗渠を下越しする場合です。基準の土被り以上に埋設する場合、熱放散の通電電流を検証する場合があり、通電品質を担保するためケーブル間どうしの離隔や許容電流に影響がある場合は、ケーブルサイズアップを検討し設計を進めます。地下ケーブルの引き入れ計算などを経て図面・数量計算を作成し工事費の算出を実施します。
■自営線構築工事
自営線の施工では、管路・マンホールの設置から特高地下ケーブルの敷設、電柱・鉄塔・架空電線の構築まで実施します。発電事業全体・周辺工事とのスケジュール調整など、円滑な施工管理で運転開始時期を厳守しています。最近の課題はやはり物価高騰による管路材料・マンホール・ケーブル類の材料費が安定しないことです。特に電気ケーブルは銅建値の変動が激しく設計時と施工時の工事費に大きく影響します。発電事業者との協議を欠かさず、着手時の工事費を決定するよう心掛けています。
■今後の展開
これまでは大規模発電の自営線構築を中心に活動してきましたが、経済産業省の進める政策のうち、自治体等に補助金支援を行う「脱炭素先行地域」や再生可能エネルギーの地産地消型の推進事業である「マイクログリッド」という分野にも力を入れています。
また、風力発電事業では風車本体・ブレードの大型輸送に必要なルート検討のニーズもあります。MMS(Mobile Mapping System)を用いて風車輸送路の支障物を特定し、支障移転範囲を明確にしながら行政や自治体をはじめ、各関連企業との協議を代行するなど業務分野を拡大していきます。
データセンタ関連ネットワーク事業
データセンタは企業活動や行政サービス、銀行、製造業、医療、教育、サービス業など、あらゆるビジネスの遂行や快適な社会生活を送るために欠かせないインフラとなっています。NTTグループで培った空間マネジメント力を最大限に活用し、地下ルートを基本とした安全性の高いデータセンタ関連のネットワーク構築を実現します。
■データセンタ間ネットワークの構築
AI(人工知能)の普及に伴うGPUサーバのニーズ拡大やデータの大容量化、ハイパースケーラーのサービス拡大を支える大規模なデータセンタ群の存在があります。これらの爆発的増加に伴いデータセンタ間を結ぶネットワーク構築のニーズも高まっています。データセンタ間ネットワークには既存ネットワークを利用するのではなく自営の光ファイバを敷設することが多いため、そのニーズにこたえる必要があります。
工期、コスト、ネットワークの総距離などの要素のうち、いずれを重視するかにより最適なルートデザインは変わってきます。例えば地下にケーブルを埋設する際、他企業の既設管路等の輻輳化によって新規管路の埋設が難しい場所があると、そのルートを避けたほうが効率的となる事例もあります。そのため基本的には電力線の構築と同様の強みを活かし、ワンストップでデータセンタ間ネットワークのニーズに対応しています。
■既存設備の活用を考慮したルート提案
データセンタ通信ネットワークの構築は、安全性と信頼性を高める必要があり、データセンタ間の冗長化要望が多くあります。ハイパースケーラーはキャリアに厳しい品質と安全性・経済性を求めています。現状の通信設備は既存設備を活用して配線することが可能で、NTT地下設備、他企業地下設備、電線共同溝、情報ボックス、軌道トラフなどが挙げられます。これらの設備の空きスペースを利用することで、新設する管路工事を抑制し経済的かつ安全性の高いルートを構築できます。当社は既存設備の利用折衝や事務手続き、ルートコンサルティングから設計・施工までワンストップで対応が可能です。
■大規模化するデータセンタの敷地内管路構築
最近はデータセンタがますます大規模化しており、1拠点の敷地内に10棟のデータセンタを建設するようなケースもあります。当社はこのようなケースで造成地に必要となる地下設備を丸ごと整備するスキルやノウハウを持っています。また、同時に電線共同溝を整備するケースもあり地中化整備を強みとする当社はあらゆる通信土木設備を同時に整備することができます。
■今後の展開
昨今、グリーンエネルギーを使用するデータセンタが増えているため、前述した「再生可能エネルギーの自営線」を敷設するニーズは増加すると予想しています。データセンタ間ネットワーク事業とも連携して当社の強みを訴求しつつ、そうしたニーズにこたえていきたいと考えています。
井ノ口 太郎
問い合わせ先
NTTインフラネット
ソーシャルインフラデザイン本部
ビジネス推進部 社会基盤ビジネス推進部門
TEL 03-6381-6222
E-mail saiene@nttinf.co.jp
ルートコンサルティングから設計・施工までワンストップで対応します。通信土木設備のノウハウを電力分野に広げ、再生可能エネルギー、データセンタのネットワーク構築に貢献します。