グローバルスタンダード最前線
ITU-T SG15(Networks, technologies and infrastructures for transport, access and home)第2回本会合の動向
2025年10月13~24日に2025-2028年会期のITU-T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector) SG15(Study Group15)第2回本会合がスイスのジュネーブで開催されました。本稿では特に、光アクセスネットワーク、ならびに光物理層標準に関する第2回SG15本会合の動向について報告します。
胡間 遼(こま りょう)/五十嵐 稜(いがらし りょう)
松井 隆(まつい たかし)/脇坂 佳史(わきさか よしふみ)
鬼頭 千尋(きとう ちひろ)/中島 和秀(なかじま かずひで)
NTTアクセスサービスシステム研究所
ITU-T SG15の概要
ITU-T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector) SG15(Study Group15)(1)はホームネットワークとアクセスネットワークを含む光通信ネットワークの国際標準について議論しています。本稿では、ホームおよびアクセスネットワークを所掌するWP1(Working Party1)における光アクセスネットワーク標準、ならびに陸上および海底光通信システムの物理層標準を所掌するWP2(Working Party2)における主要トピックについて紹介します。光通信網の特性を所掌するWP3の動向については、グローバルスタンダード最前線『超大容量通信時代を支える光伝送網技術』(2)をご参照ください。
WP1/SG15の動向
課題2では、通信ビルとユーザ宅間を光ファイバで接続するPON(Passive Optical Network)システムについて議論しています。現在は、将来の100Gbit/s超級光アクセスシステムの技術検討や、産業ネットワーク、モバイルフロントホール、超低遅延ネットワークなど多様なユースケースの収容に向けた要素技術・要求条件の議論が進められています。
第2回本会合では、波長当り100Gbit/sを超える次世代高速PONのユースケースや要件、候補技術をまとめる補足文書G.Suppl.88(3)が合意されました。高速化に向けては波形劣化の抑制が課題となっており、G.Suppl.88では受信側での波形劣化補償が容易なコヒーレント方式に加え、経済性が期待される直接変調直接検波(IMDD:Intensity Modulation Direct Detection)方式の活用に向けたSSB(Single-SideBand)変調や送信側分散補償技術、IMDDとコヒーレントを組み合わせたハイブリッド方式など、さまざまな候補技術が盛り込まれました。また今回、補足文書への反映を見送った内容について継続議論をするため、改訂1版の作成に向けた作業の開始が合意されました。波長当り50Gbit/s級の高速信号を波長多重することでさらなる高速化を実現する50G-TWDM(Time and Wavelength Division Multiplexing)-PONの物理層仕様(G.9804.4)に関しては、高速化に向けた議論が先行するG.Suppl.88における候補技術の活用についても検討されています。
また、多様なユースケースの収容に向けては、無線通信システムのモバイルフロントホールにPONシステムを活用するための要件や候補技術をまとめた、新規補足文書G.Suppl.LLSoT(W)DMの議論が行われています〔LLSoT(W)DMは文書名Low Layer Split Mobile Fronthaul over T(W)DM PONの呼称〕。さらに、光伝達網の特性を所掌するITU-T SG15課題12が中心となって作成した、2030年以降のネットワーク構成・要素技術とユースケースをまとめた技術レポート(GSTR.ION-2030)に関連した検討として、AI(人工知能)技術を活用したブロードバンドアクセスにおけるユースケースと要件をまとめた新規補足文書G.Suppl.ION-aiBB(ION-aiBBは文書名Use cases and requirements of AI enhanced ION-2030 for broadbandの呼称)の策定を進めることが合意されました。
課題3では、構内・宅内網を中心に適用される伝送技術、スマートグリッド向け通信に関して議論をしています。第2回本会合では、有線および無線の宅内高速通信標準に関し、5件の勧告G.9930Amendment2、G.9943、G.9975、G.9949、G.9949Amendment1、およびG.9975(4)~(7)が承認されたほか、宅内光ファイバ通信技術に関する3件の補足文書G.Suppl.89、G.Suppl.90、およびG.Suppl.91(5)~(10)が合意・発行されました。
WP2/SG15の動向
光ファイバ・ケーブルの特性を所掌する課題5では、日本からの寄書提案に基づき、1本の光ファイバに複数の光経路を持つマルチコア光ファイバの新規勧告化の議論が進んでいます。これまでに、既存のシングルモード光ファイバと同じ細さを持つ、標準クラッド径マルチコア光ファイバを対象とした勧告化を行うことが合意されており、第2回本会合では、既存の汎用シングルモード光ファイバ(SMF:Single Mode Fiber)、ならびに低損失性に優れたカットオフシフト光ファイバ(CSF:Cutoff Shifted Fiber)と同等の光学互換性を持つ、2種類の標準クラッド径マルチコア光ファイバ勧告(G.smmcfおよびG.csmcf)について検討を進めることが承認されました。併せて、新勧告G.smmcfおよびG.csmcfでは、2コアおよび4コアの構造を対象とすることも合意されました。また、光の導波部分が空気である中空コア光ファイバに関する情報提供や技術文書作成の提案が中国を中心に活発に行われており、課題2、並びに陸上光伝送システムインタフェースを検討する課題6との合同により、今後の検討方針について議論することになっています。
通信用光ファイバ伝送網を用いた光ファイバセンシング技術について、課題2、課題6および海底光伝送システム標準を所掌する課題8で議論されています。課題6では陸上光伝送網で分布型光ファイバセンシング(DFOS:Distributed Fiber Optic Sensing)を行うための光インタフェース要件に関する勧告がITU-Tでは初めてG.681(11)として承認・制定されました。今後さらに、分布型光ファイバセンシングの具体的な適用事例などに関する議論がなされる予定です。一方、課題8では光ファイバ海底ケーブルを用いたセンシングシステムの議論がなされており、これまでにセンシング専用の光海底システムに関する勧告G.9730.1、およびセンシングと光通信の併用を目的とした勧告G.9730.2が制定されています。さらに、海底光ケーブルを用いたセンシングに関する一般事項をまとめた新勧告G.9730の作成が進められています。
課題7では屋外設備の保守・運用および接続技術に関する標準を議論しています。課題7においても、屋外光設備の保守・点検にDFOSを活用することへの関心が高まっています。例えば、災害発生状況の遠隔モニタリング手法としてDFOSを活用することを考慮し、改訂勧告L.391災害時の屋外光設備のモニタリングシステム(12)が承認・発行されました。また、勧告L.302光ファイバ屋外設備の保守、モニタリング、試験システムについてもDFOSの活用を考慮するため、新たに改訂作業を開始することが合意されました。
おわりに
以上、ITU-T SG15のWP1ならびにWP2では、光アクセスネットワークの高速化・高性能化に向けた議論、ならびに新たな光ファイバ技術や光センシングの活用に関する議論が盛んに行われており、今後も継続的な発展が期待されています。ITU-T SG15第3回本会合は2026年6月29日~7月11日にカナダ、モントリオールにて、IEEE 802.3Ethernetとの合同ワークショップとともに開催される予定です。
■参考文献:
(1) https://www.itu.int/en/ITU-T/studygroups/2025-2028/15/Pages/default.aspx
(2) https://journal.ntt.co.jp/article/17779
(3) https://www.itu.int/rec/T-REC-G.Sup88-202510-P
(4) https://www.itu.int/rec/T-REC-G.9930-202511-I!Amd2
(5) https://www.itu.int/rec/T-REC-G.9943-202510-P
(6) https://www.itu.int/rec/T-REC-G.9949-202510-P
(7) https://www.itu.int/rec/T-REC-G.9975-202510-P
(8) https://www.itu.int/rec/T-REC-G.Sup89-202510-P
(9) https://www.itu.int/rec/T-REC-G.Sup90-202510-P
(10) https://www.itu.int/rec/T-REC-G.Sup91-202510-P
(11) https://www.itu.int/rec/T-REC-G.681-202511-P
(12) https://www.itu.int/rec/T-REC-L.391-202511-I
